波間に浮かぶ赤い船底から「コンコン」と生存を示す音が響いた。乗組員3人の生還に専門家も「奇跡だ」と驚く。海上保安庁によると、過去に起きた同様の事 故では、71年に北海道・稚内沖で転覆した「第18幸徳丸」で25時間ぶり、05年の北海道・根室沖の「第3新生丸」で10時間ぶりに船内から生存者が救 助された例がある。
第3管区海上保安本部によると、午前11時45分ごろ、巡視船が転覆した幸福丸に到着。潜水士が船底に上ってたたく と、「コンコン」という音と声が返ってきた。約1時間後、後部船室から宇都宮さん、早川さん、鳰原さんの3人が、潜水士とともに海面に姿を見せた。6人の 潜水士が、ボンベのレギュレーターをリレーのように3人にくわえさせ、船外に運び出したという。
3人は浸水が少なかった後部船室の居住 区にとどまり、暗闇の空気だまりの中で救助を待っていた。幸福丸は繊維強化プラスチック(FRP)製。多量の海水が入る間もなく、一気に転覆し空気だまり ができたとみられる。救出された3人と行方不明の4人は転覆時、船底部の居住区におり、全員が救命胴衣を着けていなかったという。4人はその後船外に脱出 して行方不明になった。3管の広報担当者は「転覆した船からは離れたくなるもの。どちらが正しい判断だったかは言えない」と話した。
ま た、伊豆漁協の藤井多喜男組合長(56)は、船底を上にして浮かんだことに「空気が入った状態。生存の可能性がある」と望みをつないだ。「海水温も黒潮の 影響で約24度あり、寒さをしのげたのではないか。助かる条件が重なった」と語った。社団法人「日本海難防止協会」の甲斐文雄常務理事は「一人きりではな く、複数でいられたことが大きかった可能性がある。お互いが励まし合い、支え続け乗り切ったのではないか」と話した。
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